排尿障害
2009年8月18日号
土浦市医師会 萩原 明(萩原同仁クリニック)
従来は、排尿に関する異常を総称して「排尿障害」 と呼んでいましたが、最近では「下部尿路機能障害」 と呼んでいます。この症状は大きく分けて「蓄尿(尿をためる働き)症状」、「排尿症状」および「排尿後症状」 に分けられます。蓄尿障害を来たす代表疾患として、 「過活動膀胱(ぼ うこう)」があります。これは、原因はいろいろ ありますが、急に尿がしたくなって我慢できない「尿意切迫」や、頻繁に排尿がしたくなる「頻尿」、実際に尿が漏れてしまう「尿失禁」などの多彩な症状を示す状態を言います。一方、排尿症状あるいは排尿後症状を呈する疾患の代表が、中高年の男性にみられる前立腺肥大症です。前立腺は尿道を取り囲むような状態で膀胱の下にあり、ほとんどの方が加齢とともに、大きくなり尿が出にくくなる排尿症状を示します。また、過活動膀胱の合併も多く、尿意切迫や頻尿(特に夜間頻尿)も良く見られる症状です。
ここで重要なのが、最近、増加傾向にある前立腺癌(がん)と良性の前立腺肥大症とを、治療前に前立腺の触診(直腸診)や採血による腫瘍(し ゅよう)マーカー(PSA)検査などで明確に区別しておく必要があることです。下部尿路機能障害の治療は症状に合わせた内服治療が中心となりますが、一部の前立腺肥大症の患者さんでみられるように、お薬が効かない方には内視鏡を用いた手術が必要なときもあります。
高齢化に伴い、排尿に関する症状をお持ちの方が増えています。「年のせい」とあきらめず、排尿状態を改善することで快適な生活を取り戻すことは可能です。そして、このような症状の陰には尿路感染症や膀胱癌、前立腺癌といった悪性疾患が潜んでいることがありますので、ぜひ、専門医による的確な診断を受けることをお勧めします。