成人の肺炎

2016年1月15日号
土浦市医師会 篠原陽子(県南病院)

 日本人の死亡総数における肺炎の順位は、平成23年以降、脳血管疾患を抜いて悪性新生物、心疾患に次いで第3位になりました。「肺炎は老人の友」とさえ言われます。肺炎の症状は、咳・痰、発熱・呼吸困難などですが高齢者では時に食欲低下、元気がない程度でわかりにくい場合もあります。肺炎の原因は細菌(その1/3~1/4が肺炎球菌です)やウイルスです。成人では、特に65歳以上や喫煙者、基礎疾患の有る場合は重篤な状態になり得ます。治療は抗生物質や抗ウイルス薬を使いますがきちんと薬を飲みきり栄養を取って安静に休むことも大事です。また、入院中や施設入所中あるいは誤嚥性肺炎を繰り返し治療していくうちに薬が効かない耐性菌など治療困難な菌が増えてきます。そこで肺炎の発症を少しでも減らすために予防が重要です。手洗いと手洗い後の手指の十分な乾燥、咳エチケット(咳が出るときはマスクをする)、といった日常の注意、また肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンの接種が勧められます。しかし肺炎球菌は90以上の種類があります。現在高齢者に勧められている23価ワクチン(ニューモバックス)は、それに含まれる23種類の肺炎球菌による菌血症をともなう重症肺炎にのみ42%程度に有効性が認められています。13価の肺炎球菌ワクチン(プレべナー:自費)、含まれる13種類に対してのみですが軽症の肺炎の45%、菌血症をともなう重症肺炎の75%を予防しました。両方の摂取が勧められます。65歳以上から誤嚥性肺炎が増え、80歳以上の肺炎は約80%が誤嚥性肺炎とされます。誤嚥の原因は脳の機能低下と加齢によるものですので、高齢者の誤嚥性肺炎は、「老衰」としてとらえるのが妥当と言われ、予防は困難です。肺炎球菌を含め口腔内の常在菌は肺炎の原因となります。口腔ケア、歯科受診、嚥下リハビリ、就寝時の頭部の軽度挙上、睡眠剤の減量中止など、まずは誤嚥の予防に努めることが大変重要です。