うつ病
2003年4月15日号
土浦市医師会 塚原直人(土浦厚生病院)
精神科外来で最近特に多く見られるうつ病の症状、治療のポイントを挙げます。基本症状は感情、意欲、身体に変調が見られることが特徴です。
感情面では、気の沈み、寂しさ、悲しみ、不安、自己非難、罪悪感、絶望感が見られます。意欲の面では、決断が出来なくなり、仕事や学業、家事に支障をきたします。身体症状では全身倦怠感、腰痛、頭痛のような身体の症状が前面に立ち、身体不調感からの体の病気になったと思い込むこともまれではありません。頭痛、不眠(朝早く起きてしまうことが多い)、食欲不振(味がなく、おいしいと感じない)、便秘などの多彩な症状を組み合わせた形で見られます。気分は朝から午前中に調子が悪いのが特徴です。人と会うことが億劫になり、出かけることが苦痛になったり、自分が生きている価値がないと感じたり、過去の失敗を強く反省し、むやみに責任を強く感じたり、追い詰められて自殺を試みたりすることがあります。自殺を試みるのは少し直ってきたかなという回復期に多いといわれています。環境の変化が大きく影響します。
例えば、進学、転勤、異動、地位が上がること、引っ越し、身体の病気、何かを成し挙げたこと、近親者の死亡などが上げられます。
いろいろな身体の病気、脳の病気、いわゆる更年期症状、痴呆症、その他のストレス性反応を鑑別して本来のうつ病であることを診断して治療に当たります。治療には本人がうつ病であることを知ることが大切です。案外、本人は病気であることを認めず無理をしてしまうことが多いようです。病気を知ることにより無理をしなくなり、うつ状態の悪化を防げます。身近の人が励ましたり、いろいろなアドバイスをしたり、気分転換にと外出に誘ったりすることもよくありません。そっと見守ることが大切です。ゆううつな時には話しかけられることもつらいものです。休養をとれればそれに越したことはありません。うつ状態の時期は3ヶ月ぐらいで軽くなることが普通です。
症状にあわせて抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤を使うことが一般的です。薬はそれぞれに相性があり、一長一短がありますので専門医による診察、治療が必要です。