おねしょと便秘の意外な関わりとは?
2024年2月15日号
土浦市医師会 伊本夏樹(日立製作所土浦診療健診センタ)
お子さんの宿泊学習の予定が近づいてくると、おねしょ(夜尿症)の相談が外来で増えてきます。夜尿症は、日本の小・中学生の6.4%にみられますが、成長にともなって自然に良くなることも多いので、相談をためらう保護者の方も少なくありません。命に関わることはほぼありませんが、毎日の生活の質に悩ましい影響を及ぼすことがあるので、お困りの方は遠慮することなく小児科医に相談してください。
ところで、「おねしょと便秘に何か関係がある」と聞くと、頭に「?」が浮かびませんか?まだまだ分からないことも多いのですが、夜尿症の診療にはこの10年くらいで大きな変化がみられています。私が小児科研修医だったときには、「起こすな、怒るな、焦るな」といった保護者の方向けの生活指導を教えられました。当時、薬は膀胱の緊張をほぐす薬と、脳の神経伝達物質の働きを改善する薬くらいしかなく、生活指導が治療の中心でした。
2012年に内服する抗利尿ホルモン剤が治療アイテムとして登場すると、それまでと比べて格段に治療の質が上がりました。そして、夜尿症と便秘との関わりですが、夜尿症では昼間のおねしょ(昼間尿 失禁)や昼間の下部尿路症状(頻尿、乏尿、尿意切迫、遷延性排尿、腹圧排尿、排尿がまん姿勢、残尿感など)をともなう例が多くみられ、この場合、同時に便秘をしているケースが多いことが分かってきました(機能性排尿排便障害)。この便秘を治療することで夜尿症が改善することが多くあり、積極的な便秘治療が推奨されています。
お子さんのおねしょに悩んでいる保護者の方は、お子さんの排尿の様子だけでなく、排便状態もよく観察した上で、小児科医に相談してください。日本夜尿症学会(現:日本夜尿症・尿失禁学会)が発行している「夜尿症診療ガイドライン2021」にも詳しいことが紹介されています。