前立腺がんについて
2023年4月18日号
土浦市医師会 森優(土浦ベリルクリニック)
前立腺がんは年々増加傾向にあり、男性がかかるがんとしては、胃がん・肺がん・大腸がんを抑えて1位となっています。50歳を過ぎると増え始め、60歳代で急激に増加し、80歳以上では半数の方に潜在性の前立腺がんがあるといわれています。しかし、男性のがんの部位別死亡数では、前立腺がんは6位となっていて、早期発見ができれば、命を落とすことが少なくなっています。
前立腺がんの早期発見には、PSAという腫瘍マーカーが必要不可欠です。実際に、検診や人間ドックなどで行ったPSA検査をきっかけとして見つかる場合が多く見られます。
前立腺がんは、病勢がかなり進行しない限りは無症状です。尿の勢いが悪い、頻尿、残尿感などの排尿障害などの症状があって受診した際に、PSA検査やエコー検査で見つかる場合もあります。がんが進行してくると、血尿や、骨転移にともなう腰痛、圧迫骨折などで見つかる場合もあります。
以前は、欧米人に多く、日本人には少ないがんといわれていたため、欧米型の食生活(高脂肪食、乳製品など)の普及が原因になっているとの説もありますが、明確にはなっていません。また、家族性の発症傾向は指摘されていて、父親あるいは兄弟が前立腺がんであると、前立腺がんになる危険性は高まります。
治療方法としては、内分泌治療や手術治療、放射線治療などがあります。例外もありますが、前立腺がんは男性ホルモンを栄養源にして成長していくので、男性ホルモンの分泌を抑える注射や飲み薬で進行を抑えます。また、手術療法は、以前は出血量が多いことや、術後の尿失禁が問題となることがありましたが、近年ではロボット手術の普及で、これらの問題点はかなり改善しています。放射線治療に関しても、機器の進歩により周囲臓器の被爆は最小限となっていて、副作用の頻度も改善しています。ほかにも陽子線治療や凍結 療法などもあり、早期であれば治療の選択肢は広がります。
前立腺がんは早期発見がとても重要です。50歳を過ぎたら、PSA検査の受診をおすすめします。