小児の感染症と感染予防 ~アルコールが無効なウイルスについて~
2023年1月17日号
土浦市医師会 今村公俊(土浦協同病院)
小児はさまざまな感染症に罹患します。そのようなとき、ご家族や周囲の方に感染を広げないための対策を正しく理解できていますか?今回は感染予防についてお話しします。
小児の主な感染症の感染経路は、次のとおりです。
空気感染: 水痘・麻疹
飛沫感染:麻疹・おたふくかぜ・インフルエンザ・咽頭結膜熱・ RSウイルス感染症・ヘルパンギーナ・溶連菌感染症・ 手足口病・新型コロナウイルス感染症
接触感染: 水痘・麻疹・おたふくかぜ・インフルエンザ・咽頭結膜熱・ RSウイルス感染症・ヘルパンギーナ・溶連菌感染症・ 手足口病・ノロウイルス胃腸炎・ロタウイルス胃腸炎・ 流行性角結膜炎・新型コロナウイルス感染症
空気感染は防ぐことが困難なため、予防接種を受けることが効果的です。また、飛沫感染予防には飛沫を避ける、接触感染予防には手や身の回りを清潔に保つ、といった対策をしますが、すべてにおいて手洗いが重要なのは言うまでもありません。
手洗いにアルコールを使用することは多いと思いますが、アルコールが無効なウイルスは多くあります。
ウイルスには、膜を持つエンベロープウイルスと、膜がないノンエンベロープウイルスがあります。エンベロープウイルスはアルコールなどで膜が破壊されると不活性化しますが、ノンエンベロープウイルスは不活性化しません。
小児の主な感染症のノンエンベロープウイルス(アルコールが無効)
アデノウイルス・・・咽頭結膜熱・流行性角結膜炎の原因ウイルス
エンテロウイルス・コクサッキーウイルス・エコーウイルス・・・手足口病・ヘルパンギーナの原因ウイルス
ノロウイルス・ロタウイルス・・・胃腸炎の原因ウイルス
糞便で排出されるものはほとんどがノンエンベロープウイルスです。おむつ交換のあとにアルコールをシュッでは、手指消毒としては不十分なのです。消毒はできませんが、せっけんを使った手洗いで除染することは有効です。
ご家族に感染症の患者さんが発生すると、家族中に広がって大変な状況になることが多くあります。正しい知識で予防を行い、感染の広がりを抑えましょう。