大人の発達障害

2021年5月18日号
土浦市医師会 塚原靖二(土浦厚生病院)

【どんな病気ですか?】

 発達障害とは、小児期に認められる「自閉症スペクトラム障害」「注意欠陥多動性障害」「学習障害」などの総称です。「自閉症スペクトラム障害」は、コミュニケーションが苦手、相手の気持ちが理解できない、特定の物へのこだわり、柔軟な対応ができないなどの特性があります。「注意欠陥多動性障害」は、ケアレスミスが多い(不注意)、じっと座れない(多動)、規則が守れない(衝動性)などの特性があります。「学習障害」は、読み・書き・計算など、ある特定の分野が苦手で学習が困難などの特性があります。発達障害の多くは小児期に気づかれ、専門医により診断され、本人の適正に合わせた環境調整や薬物療法が行われます。

 しかし、なかには成人になるまで発達障害に気づかれず、社会人になってから不適応を起こし、初めて診断されることがあります。大人の発達障害に特徴は、不注意症状(仕事を効率的にできない、片付けができない、時間が守れない)や衝動症状(衝動買い、突然キレる、相手を傷つける発言)、多動症状(おしゃべりに夢中になりやすい、じっとしていられない、自分勝手な行動)が主症状です。これらの症状により、不適応を起こし、ご本人、ご家族、関係者が悩まれます。

【治療法は?】

 治療の基本は、ご本人の特性に合わせた生活環境調整です。集中できる環境作り、情報過多を避けること、一日のスケジュールを決めて崩さないことなどの環境調整が有効です。また、支持は短く簡潔にする、あいまい表現を避ける、マニュアルに沿った対応、困ったときの相談体制を作るなどの対応が有効です。

 大人の発達障害の場合、不適応により、抑うつ・不安・不眠などの精神症状を合併することがあります。その場合は、精神病・心療内科を受診して、環境調整や薬物療法(抗うつ薬、抗不安薬、向精神薬、睡眠導入薬など)を受けることも有効です。