大腸がん検診について
2020年8月18日号
土浦市医師会 稲葉智子(鶴町医院)
近年、大腸がんは男女ともに増えており、がんで亡くなる方のうち、男性では肺がん、胃がんに次いで第3位、女性では第1位です。
何らかの自覚症状を感じて病院を受診し発見された大腸がんは、約80%が進行がんです。一方で、検診で発見される大腸がんは約60%が早期がんで、非常に高い割合で命を救うことができます。また、発見が早いほど痛みや負担の少ない治療で治すことができます。しかし、早期の大腸がんはほとんど症状がありません。そのため、がん検診を受けていただくことがとても大切です。
検査と検診の違いは何でしょうか?検査は、自覚症状があるときに詳しく調べるもので精密に行われます。一方の検診は、基本的に自覚症状がない方に対して簡便な方法で行われ、ふるいにかけるものです。ここで異常が疑われれば、検査で詳しく調べるのです。わが国では、大腸がん検診として40歳以上のすべての方に対し免疫学的便潜血法を行っています。そして、陽性の場合には、精密検査として大腸内視鏡が勧められています。しかし、便潜血法を受けていただいている方は全体の約40%、陽性結果で大腸内視鏡を受けていただいている方は、その約半数と低くなっています。便潜血法は、早期がんの30~50%で陰性となることがあります。また、大腸がん以外の病気でも陽性となることがあり、受診率が低くなっている一因と考えます。ですが、年1回継続して受けていただくことで、約80%の大腸がんを発見することができます。さらに、前がん病変と考えられる大腸ポリープ(腺腫)が発見されることもあります。内視鏡によりそのようなポリープを治療することで、その後のリスクが減少するのです。
したがって、大腸がん検診をぜひ受けていただきたいと思います。さらに、ご家族の中に大腸がんの方がいらっしゃる場合や便通異常のある方は、担当の先生とご相談のうえ、大腸内視鏡を受けることをお勧めします。