認知症への備え
2020年5月15日号
土浦市医師会 塚原健介(土浦厚生病院)
認知症の予防については、新聞や雑誌、テレビで頻回に特集が組まれています。食生活、運動、知的活動、適切な血圧や血糖管理が、認知症の発症や進行を遅らせる可能性はあるのでしょうが、高い確率で予防できる手段はないという見解の専門家もいます。また、根治薬についても、研究は不調で開発中止が相次いでいるという報道もあります。
精神疾患は、本人の努力や性格、環境のストレスとはあまり関係なく発症することもあるため、予防は困難な面があります。認知症についても、努力すれば予防可能と強調することは、発症した本人や周囲は予防に失敗した、努力が足りなかったなどと考えやすく、かえって病気への偏見につながる危険性もあると思われます。
ある当事者の方が、「予防」よりは「備え」という言葉を使った方がよいと話をしておられました。私もそれに賛成です。「予防」という言葉を使うと、頑張って予防に取り組んでいながら認知症になった方が、予防が失敗したと思い自信をなくしてしまう恐れがあります。「備え」であれば、台風が来る前に食料などを準備しておくことと同じです。「もし認知症になったら」と前もって考えておくことは重要だと思います。
認知症への備えとして特に重要なことは、介護サービスや介護保険についてよく知っておくことだと思います。老人ホーム、介護老人保健施設、訪問介護、デイケア、認知症リハビリテーションなど、さまざまなプランがあります。市の担当部署の方や、ケアマネージャー、社会福祉士、精神保健福祉士、ソーシャルワーカー、介護福祉士などの専門職種の方々から、アドバイスを頂けると思います。また、「認知症カフェ」という、認知症の方やその家族、認知症に関心のある方が自由に集えるカフェも各地域に設置されていますので、お問い合わせのうえ利用されると、きっと役に立つと思います。