成人期ADHDについて

2016年5月17日号
土浦市医師会 塚原達也(土浦厚生病院)

 成人期ADHDは、不注意、多動性、衝動性によって特徴づけられる疾患です。ただし、この疾患は大人になってから急に発症することはなく、12歳になる以前からいくつかの症状が存在していたことが診断の前提になります。

 不注意の症状としては、小児期では、①気が散りやすく、忘れっぽい、(あることに集中しすぎて切り替えられない場合も含む)、②先生の話を聞けない、課題を最後までできない、③指示通りに行動できない、④整理整頓ができない、物を紛失するなどがある。成人期では、大事なことを先延ばしする、順序立てて行動できない、時間の管理や整理整頓ができない、業務を最後までやり遂げることができないなどの形で現れる。多動性および衝動性の症状としては、小児期では①過剰におしゃべり、はしゃぎすぎる、体をそわそわ・もじもじさせる、②走り回る、よじ登る、③静かにできない、じっと座っていられない、④当てられる前に問題に答えてしまう、順番を待てない、他人に口出しするなどがある。成人期では、相手の話をさえぎってまで話す、落ち着きなく貧乏ゆすりなど無駄な動きが多い、感情の起伏が激しく短気でつい叱責してしまう、仕事を過剰に引き受けてしまう、頻繁に転職する、失言が多い、運転が雑で交通事故が多い、衝動買いといった形で現れます。これらの症状のため日常生活に大きな支障があると判断された場合、ADHDと診断されます。

 気分障害、不安障害、物質乱用で既に治療を受けている患者の10%程度に成人期ADHDが見つかったという海外データもあります。成人期ADHDの患者は社会生活に不適応を起こしやすい結果、これらの疾患を併発しやすいと考えられます。治療は、ADHD症状によるトラウマ化した不適応状態が好転し、ADHD症状を自分らしさとして折り合えるようになることを目標に行われます。脳の前頭前野における機能不全が原因と考えられており、前頭前野のノルアドレナリンやドパミンの働きを調整する薬物療法が行われます。また、心理社会的治療として、認知行動療法、環境調整が行われます。