臓器移植法改正について
2010年11月16日号
土浦市医師会 山崎信吾(土浦協同病院)
本年7月に施行されました改正臓器移植法について解説いたします。
まず、法改正が必要となった背景を説明いたします。日本の移植医療は、医療技術が十分であるにも関わらず法的整備が不十分なために、諸外国に比べて立ち遅れ、特に小児の臓器移植は国内ではできない状況でした。成人においても、臓器提供数が少なく、多くの日本人が渡航移植を受けてきました。
しかし、世界的にも臓器が足りないのが現状で、海外での臓器移植は、その国の移植が必要な患者の生命を奪うことに繋がります。さらには、臓器売買などにより社会的弱者が被害者になってきており、日本は国際的な非難の対象となってきました。このような事態に世界保健機関(WHO)は”自国の患者に移植する臓器は自国で準備する”ように勧告、国際移植学会の「イスタンブール宣言」は臓器取引と渡航移植を禁じています。それまで日本人を受け入れてきた欧米でも、日本人が移植手術を受けられなくなってきています。
今回の改正のポイントは
- 本人の意思表示が不明でも家族の承諾で臓器提供が可能
- 15歳未満の人も臓器提供が可能に
- 本人が書面による意思表示をしていれば、親族への優先提供が可能になったこと
の3点です。
改正前までは”本人が生存中に臓器を提供する意思を書面で表示し、さらに遺族が拒否しないとき”という規定でしたが、民法で遺言可能年齢が15歳以上で、15歳未満の人は法的に有効な意思表示ができないことから、臓器を提供できないことになっていました。
今回の改正では、”本人が臓器を提供する意思がないことを表明していなければ、遺族が臓器提供に書面で承諾するとき”にも臓器提供が可能となりました。
これにより、本人がドナーカードをもっていなくても、15歳未満でも臓器提供が可能になりました。今回の改正前には脳死下臓器提供は年間10件前後でしたが、改正後の2ヶ月強で14件もの臓器提供がありました。
茨城県では脳死後の臓器提供事例がまだありませんが、この拙文が、ご家族のなかで臓器移植について話し合っていただく機会になれば幸いです。