とびひ(伝染性膿痂疹)
2010年8月17日号
土浦市医師会 石川研二(石川皮膚科医院)
- 原因:化膿(かのう)菌(主に黄色ブドウ球菌)が何らかの皮膚病変(すり傷、湿疹・虫さされ・あせもなどを掻き壊した傷など)から感染して生じます。正常皮膚では、化膿菌は定着・増殖しにくいので感染は起こりにくいと考えられます。菌の活動が活発になる高温多湿の夏、特に7月から8月に最も多く発生します。
とびひは代表的な子どもの皮膚病で、大人ではまれにしか見られません。菌に対する皮膚の抵抗力の弱さ、また発症母地になる皮膚の傷を清潔に保つ管理が不十分になりがちなためと考えられます。
- 症状:菌が産生する毒素の作用により、表皮(皮膚のいちばん外側の部分)に水疱(水ぶくれ)ができます。とびひの水疱は薄くて破れやすく、びらん(赤いただれ)を生じます。そこからジクジクした分泌物が出て、乾くとかさぶたが付着します。これらの水疱の中身や、びらんからの分泌物には菌がたくさん含まれるので、手でいじることによりあちこちに付着して新たな病巣がつぎつぎと増えてゆきます。そして、ほかの子どもにも移る、すなわちあたかも火事が飛び火するかのように増えてゆくのでとびひとよばれるようになったようです。
- 治療:抗生剤の内服と適切な外用剤(塗り薬)を、同時に併用するのが基本的な治療です。外用剤のみの治療では、とびひが新たに増えるのを抑えきれないことが多いのです。また、抗生剤をきちんと内服していても、ジクジクした湿潤(湿潤)の強い皮疹(ひしん)、強い痒みを有する皮疹などの個々の病変の状態にあった外用療法をしていないため、こじれた状態で来院するケースも少なくありません。
入浴(初期はシャワーがよい)は可能ですが、あくまでも入浴後に適切な外用療法をするという条件が必要です。
- 予防:すり傷などの外傷や痒くて掻き壊す危険性のある皮膚病を正しく手当てしておくことが、とびひを予防するうえで最も大切です。