日本脳炎
2010年7月15日号
土浦市医師会 鈴木敏之(おおつ野こどもクリニック)
厚生労働省は平成22年4月1日より日本脳炎第1期の標準接種期間に該当する方(平成22年度において は3歳のお子さん)に対して、ワクチンの積極的勧奨 を再開するよう方針を変更しました。
これは平成21年6月から新しい乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが使用開始となり、その安全性と供給体制が整ったためです。新しい日本脳炎ワクチンは、定期の第1期(3歳~7歳6か月)の予防接種に使用可能です。第1期は初回の2回と1年後の追加接種の計3回です。3歳になったお子さんはなるべく早くワクチンを接種するようにしましょう。
また、7歳6か月までであれば、接種をまだ受けてないときや、旧ワクチンで1~2回のみ接種したときも、新ワクチンを接種できますので、かかりつけ医に相談してください。
日本脳炎とは、日本脳炎ウィルスが脳に侵入し脳を破壊する病気です。症状が現れずに経過すること(不顕性感染)がほとんどですが、脳炎になったときには、6~16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識障害、けいれんなどの脳の障害を生じます。20~40%が死亡し、助かっても半数には重い神経後遺症が残る恐ろしい感染症です。
日本脳炎ウィルスは蚊で媒介され、特に水田を好んで繁殖するコガタアカイエカが重要なウィルスの運び屋です。日本脳炎ウィルスに感染したブタを蚊が吸血してやがてヒトへの感染源となります。ブタや蚊を調査すると、日本脳炎ウィルスは北海道を除く、ほとんどの地域で活動がみられます。茨城県は養豚が盛んで、水田も多く、実際にこの数年間に日本脳炎となった患者さんがでています。
日本脳炎を予防する一般的な注意として、夏季の夜間の外出を控える、蚊が屋内に侵入しないように網戸を使用する、夜間の窓や戸の開閉を少なくする、蚊帳を利用するなどがあげられます。
元気なお子さんに、外出するなというのは難しいので、きちんと予防接種を済ませることが最も大事 です。