虚血性心疾患について
2005年11月15日号
土浦市医師会 寒河井博(さくら内科クリニック)
食生活の欧米化や運動の減少などの生活スタイルの変化に伴って近年、虚血性心疾患が増加の一途をたどっています。
心臓は、血液を送り出すポンプであり、休みなく1日に約10万回もの収縮と拡張を繰り返しています。この心臓を養っているのは、ポンプの中の血液ではなく心臓の表面を走る 血管(環状動脈又は冠動脈といいます)により送られてくる血液です。この環状動脈が、さまざまな原因により流れが悪くなる状態が虚血性心疾患の病態です。
動脈硬化による狭窄きょうさくや血栓、攣縮れんしゅく(血管の痙攣けいれんのこと)などを原因として、血液の流れが一時的に悪くなる状態が狭心症です。完全に血流が途絶えた場合が心筋梗塞です。心筋梗塞になると心臓に不可逆性の障害が残ってしまい、重症例では突然死を来たすこともあります。
心筋梗塞にならないうちに虚血性心疾患を発見し、必要な治療を受けることが肝要です。薬物療法,カテーテルによる環状動脈形成術、血管内ステント留置、外科的なバイパス手術など、さまざまな治療法があります。
経皮的冠動脈形成術について、大まかに説明します。手首またはひじ関節または太股の付け根などを局所麻酔し、ここからカテーテルという柔らかい管を動脈内に挿入し、 血流とは逆行させ心臓表面の冠動脈まで進めていきます。これを用いて、環状動脈の狭い部分をバルーンを使って拡張させたり、場合によってはステントという金属性の筒で内側から支えを作る治療法です。
治療は、循環器内科にて行います。こうした内科的な治療と外科的な治療との併用で、完全な血行再建治療を目指すときもあります。
健康診断で安静時の心電図をとりますが、これで異常がないからといって狭心症が否定されたわけではありません。次にどの検査を行えば一般の検査に現れない狭心症を見いだせるか、それを考えるのが我々の使命です。
ご自身がどの病態であるかを知っておくのは大変意義のあることです。どの治療法が最適なのか、主治医とよく相談して健康で過ごされますように。