リハビリテーションの目指すもの
2002年4月16日号
土浦市医師会 尾崎行雄(神立病院)
けがで骨折したり、脳の病気や外部外傷で半身不随になったり、開腹手術のあと長いこと寝込んだりして、体が不自由になった時がリハビリの出番です。リハビリは、理学療法(PT)・作業療法(OT)・言語聴覚療法(ST)の3つに分かれます。理学療法は硬くなった関節をほぐし筋肉を鍛えて、寝起き・立ち座り・歩行への基本的訓練を行い、必要に応じて装具や車椅子の製作も行います。作業療法は色々な器具や手工芸を使って、日常生活に必要な細かい動作の習熟をしたり、精神科や痴呆症のリハビリも行います。言語視覚療法は言葉の発達の遅れや病気で生じたさまざまな言語障害の治療を行いますが、飲んだり食べたりする嚥下機能の訓練も行います。こうした機能回復訓練を組み合わせて、「失いかけた生活を取り戻す」のがリハビリテーション科の仕事です。
「訓練」という言葉から、「リハビリは痛くてつらいもの」「頑張ってガンガンやらないとダメ」というイメージがありますが、これは間違いです。リハビリには障害に応じた理論的なやり方があるのです。やり過ぎにはかえって筋肉を痛めたり、悪い癖を作ってしまったりして逆効果です。また、「完全によくなるまで」とか「歩けるようになるまで入院で」野声も聞きますが、リハビリは魔法ではありません。障害の程度によって回復の仕方には限界があり、大きなり小なり後遺症を残します。どんなに長いこと入院してリハビリをやっても、結果は「寝たきり」や「車椅子の生活になる」という場合も多いのです。
しかし、たとえ歩けなくても、生活様式や家の構造をかえることによって退院できる人はたくさんいます。単にもとの生活に戻ることだけを求めるのではなく、「障害に応じた新しい生活」を築きあげることがリハビリの目標であり、それを維持することが大切なのです。担任してからリハビリを続けなければ、たちまち能力は低下してしまいます。家庭で行う訪問リハビリ、老人保健施設での生活リハビリ、デイケアなどの通所リハビリはこうした意味で大変重要なのです。