禁煙の勧め

2002年3月15日号
土浦市医師会 清水源之

 木枯らしの吹き付ける10年前の寒い2月のある日、昨夜からの不整脈が気になって、市内の循環器のT医院を訪れた。心電図検査の結果、夜更かしと煙草の吸いすぎが重なって冠動脈に異変が生じたとの診断であった。主治医から、これを機会に禁煙しないと慢性的な心臓病に移行してしまうと諭された。そこまでいわれた以上、喫煙断念も止むなしと考えた。確かに、数日前から煙を深く吸い込むと左胸部がキューンと締め付けられる圧迫感を覚えていた。
 それゆえ、思いのほか迷うことなく禁煙に踏み切れた。踏み切ったとはいうものの、禁断症状からくるイライラに悩まされてすごした当夜の時間経過の長いこと、大変に苦労したことを今でもはっきりと記憶している。
 やがて、我慢の1週間を乗り切り、1ヶ月が過ぎていった。その頃から少しずつではあるが、確実に、からだに良い変調が現れはじめた。
 あたかも、眼下にたちこめている靄が大気に追い払われ、視野が広がったように脳がすっきりしてきた。次いで、カラオケで下手な歌を唄っても、それなりに息が続くようになった。
 舌苔がとれて口腔内がすっきりし、味覚がよみがえった。夕食時の晩酌も楽しくなり、食い物も以前と比較して何倍もおいしく感じるようになった。さらに予想外の結果として人との対話時に落ち着きを覚え、逆に「間」がもてるようになった。
 金エンジの自分を振り返るに、まさに慢性頭痛症、慢性咽頭炎、慢性胃炎の患者に等しかったと考える。近年の統計によれば、日本人の死因の第1位は悪性新生物(がん)である。その中で、肺がんは男性の場合は第2位、女性の場合でも第4位を占めている。喫煙と肺がんの因果関係が無視できない今日、自分ばかりでなく他人の健康の為にも率先して禁煙に努力していただきたいと思います。