不妊について

2013年2月15日号
土浦市医師会 西田正人(霞ヶ浦医療センター)

 10組の健康なカップルが生活を共にすれば、1年以内に8組が妊娠し、残り2組の内1組が2年以内に妊娠するとされています。そこで、2年経っても妊娠しないカップルを不妊症と呼べば、約1割ということになります。このような定義は生殖能力の高い25歳頃を対象に考えられています。つまり、25歳の生殖能力は約90%と考えることができます。
 では、生殖能力はいつまで続くのでしょうか。日本人女性の閉経年齢は約50歳とされており、その5年前、つまり45歳頃に生殖能力はほぼ0になると考えられています。色々な不妊治療を受ければもう少し伸びることもありますし、45歳を過ぎても妊娠することはあります。そこで、45歳時の生殖能力を仮に10%としてみると、25歳時の90%から45歳の10%へ、つまり、20年間で生殖能力は80ポイント下がり、1年間に4ポイントずつ下がる計算になります。35歳時には25歳時よりも40ポイント下がって丁度50%、40歳になると10人中3人しか妊娠できないということになります。
 このように、人間も動物である以上、適正な生殖時期というものがあります。結婚は社会的な契約ですから、結婚適齢期という言い方はしなくても良いのではないかと思いますが、妊娠・出産適齢期というものは厳として存在すると考えるべきでしょう。
 ではなぜ高齢になると妊娠しにくくなるのでしょうか。それには2つの要因が考えられます。1つは卵そのものの老化です。閉経という現象は卵巣の老化であり、卵巣に卵が無くなることを意味します。もう1つは、生殖に影響を与える疾患が、この頃急速に増えるためです。子宮内膜症や子宮腺筋症といった病気は30代に好発します。また、子宮筋腫も30代に増えてきます。卵が正常でも、このような病気が子宮や骨盤内にできて妊娠を妨げることになります。
 原因は女性ばかりではありません。実は男性の要因も無視することはできないのです。男性の精子数が20年前に比べて、若い人でも少なくなっていることが報告されています。つまり、不妊は決して女性だけの問題ではないのです。
 生殖に適齢期がある以上、もし、子供ができにくいと気付いたら、その検査や治療は早いに越したことはありません。夫婦できちんと話し合い、2人で検査を受けることが大切です。