PSA検査について
2011年11月15日号
土浦市医師会 萩原明(萩原同仁クリニック)
近年欧米並みに罹患率が高まりつつある前立腺がんですが、PSA検査は前立腺がんを判断する最初の基準として非常に有効です。血液検査だけで測定できるため、最近では集団検診でも広く用いられています。ちなみにPSAとは健康男性の前立腺から分泌されるタンパク質で、通常は血液中に流入する量はごくわずかです。しかし、前立腺の疾患などによって浸出量が増加するために検査値が上昇します。PSA値が高ければ高いほど、前立腺がんの確率も高くなります。年齢にもよりますが、約4.0ng/ml程度からがんの疑いが強くなります。4.1~10ng/mlはグレーゾーンと呼ばれ、がんの危険性は20~30%、さらに10.1ng/ml以上の方の約50%にはがんが存在すると言われています。
ただし、PSA値の異常が必ずしも前立腺がんの存在を示すとは限りません。前立腺肥大症、前立腺炎、射精直後や激しい運動の後にも異常高値を示すことが知られています。それ故、あくまで前立腺がんを発見するきっかけとなる一つの基準と考えるべきです。
前立腺がんは中年以降に多い病気です。積極的に定期健診でPSA検査を受けるべき年齢は50歳が一つの目安となります。しかしながら、ある程度の遺伝性があるとの報告もありますので、家族や親族に前立腺がんになった人がいる場合には、40歳以降には年に一回程度のPSA検査は受けた方が良いでしょう。
もしも、PSA検査に異常がみられた場合、本当にがんがあるのか?また、がんが存在したとしても、その悪性度や進行の程度まではPSA値のみの結果では判りません。
まずは泌尿器科を受診して、肛門から指を入れる直腸診で前立腺の状態を調べてもらうことが大切です。そして、超音波やMRIなどの検査で、がんが疑われれば、組織片を調べる前立腺生検で確定診断をつける必要があります。
前立腺がんに限らず、すべての疾患に共通することですが、まずは定期健診を受け、病気の早期発見に努めることが重要です。