放射線はどの程度怖いのか
2011年10月18日号
土浦市医師会 大原潔(土浦協同病院)
この9月で東日本大震災の発生から半年が経過します。地震自体による被害もさることながら、併発した原発事故は放射能汚染への国民の不安をかき立てています。放射線の平和利用には事故を起こさないことが大原則でしたが、想定規模を超えたとされる大津波により大量の放射能が飛散してしまいました。飛散した放射能は、拡散と半減期とにより次第に減ってはいきますが、残留は避けられません。主な残留放射能は放射性のセシウムとストロンチウムですが、国民の卑近の話題は牛肉や穀物などの放射能汚染による被ばくです。起きてしまった放射能事故をどう受け止め、どこに安心の落としどころを見つけるかが今後の国民の課題だと思います。
被ばくによる健康被害という言葉が使われています。健康(人体)への影響は放射線の量に比例することが分かっています。今回の事故のような“少量”被ばく(100ミリシーベルト以下)での健康被害は、「将来がんになる可能性が少しふえるかも知れない」ということです。体調を崩したり胎児に奇形を生じたりするような線量ではないのです。その根拠は主に広島・長崎の原爆被災者の追跡調査結果にあります。ただしこの調査では、推定による外部被ばく線量が主に示されており、今話題の内部被ばく線量は加算されていないようです。また、放射線医療などをも通して、幼児・小児は成人よりも放射線の影響を受け易いことは分かっていますが、どの程度なのかはよくは分かっていません。
可能性としての発がん確率の増加をどう斟酌するか(放射線をどの程度怖いと思うか)は国民一人ひとりの受け止め方にかかっています。長寿国日本では、今や2人に1人ががんに罹り、亡くなる人の3人に1人はがんが原因とされています。発がんの原因としては放射線よりも喫煙や食物の方がはるかに大きいとされています。熱しやすく冷めやすい日本人、1年後も放射線による発がんに関心を持ち続けているでしょうか。