認知症

2011年8月15日号
土浦市医師会 綿引秀夫(わたひきクリニック)

 近年、高齢化が進み、認知症患者の数が増加しています。認知症の話をすると、単なる物忘れとどう違うのかとよく質問されます。
 例えば私たちでも、人の名前を思い出せなかったりすることはあるでしょう。でも、それを認知症とは言いません。認知症では、ひとつひとつの事柄の順序や関連性を考えることが苦手になります。主婦の場合、特に料理が苦手になります。ですから、料理ができなくなったら認知症を考えなくてはなりません。
 また、認知症で困ることは、「物とられ妄想」や「徘徊」、「暴力」、「異食(食べ物でないものを食べてしまう)」、「ろう便(便をこねくりまわす)」などがあります。
 家でおとなしくしている認知症の患者さんもいれば、家族の制止をふりはらい、「徘徊」してしまう患者さんもいます。そのようになったら、家族でのケアも難しくなり、社会的資源、たとえば、「グループホーム」などを利用する必要もでてきます。
 最近、認知症の治療薬がたくさん開発されています。効果は、皆さんが期待するほどではありませんが、人によっては効果のある人もいます。「被害妄想」や「暴力」、「問題行動」などは、多くの人に効果のある薬があります。一方、「物忘れ」は薬を服用しても、悲しいですが進んでしまいます。
 また、認知症の人を家族がケアするコツをつかむことも大切です。まず、認知症の人をしかってはいけません。「しかられた」という感情が残ってしまい、憂鬱になります。また、本人がパニックに陥らないように、一つのことのみを指示してください。
 認知症は、いつ、誰がなるかわかりません。そのときに、家族だけで抱え込まずに、社会の問題として解決していきましょう。