肺炎球菌について

2011年4月15日号
土浦市医師会 石原啓志(石原小児科)

 肺炎球菌は19世紀後半に肺炎の原因菌として発見されました。その後、細菌性髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、骨髄炎などの病気の原因菌であることが分かってきました。特に乳幼児期の細菌性髄膜炎と高齢者の肺炎は重篤な疾患で、適切な治療を行っても死亡することや後遺症が残ってしまうことが少なくありません。その理由の1つとしてこれらの病気の治療に使用する抗生剤が効きにくくなったことがあります。ペニシリンが開発されて以来、数多くの抗生剤が出現し肺炎球菌だけでなく、多くの細菌感染症の治療に用いられてきました。当初その効果は絶大でしたが、多くの抗生剤が長期間使用されるにつれ次第に細菌は抗生剤が効きにくく(耐性菌の出現)なってきています。そこで最近では耐性菌の出現を防止するため抗生剤の投与を慎重に行うようになってきています。日常多くみられる風邪症状の大半はウイルスが原因で抗生剤は無効ですので安易な投与を控える傾向にあります。抗生剤の効果を保つため必要ですのでご理解をいただきたいと思います。
 一方、この肺炎球菌感染症に対しては予防できるワクチンがあります。主として成人用と小児用の2種類のワクチンがあります。成人用はある種の慢性疾患の患者さんや65歳以上の高齢者に接種されます。一度接種すると5年間は効果が持続するといわれています。小児用ワクチンは主として乳幼児の細菌性髄膜炎の予防として接種されます。生後2か月から9歳まで接種可能ですが接種開始年齢により回数が異なります。小児用、成人用どちらのワクチンに関してもかかりつけ医や保健センターなどに相談してください。
 なお、土浦市では平成23年2月より、5歳未満児の小児用肺炎球菌ワクチン接種は自己負担なしで受けられます。
 本稿の執筆中に、予防接種ワクチンの同時接種による重大な事例が認められ、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種が一時見合わせになりました。国の専門家会議で検討された結果、4月より再開されるとのことです。